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zoom RSS 会報記事 半藤一利・松岡陽子マックレイン講演会に参加して 長井てつ子

<<   作成日時 : 2009/12/18 23:25   >>

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 半藤一利・松岡陽子マックレイン講演会に参加して
   長井てつ子

 四月半ばの室蘭は、近くの山がまだたっぷりと雪をかぶり、木々は枝を天に向けて突っ立っていた。空港へ向かう途中の景色が、シンとして棘とげしくさえあった。
 関空から列車に乗ると、窓から緑をまとった木々と満開の八重桜が見えた。また、会場である同志社女子大学の庭にはしだれ桜の木があり、赤みを帯びたピンクの花たちが、しなやかに伸ばした細い枝にしどけたように咲いている。京都の春はもうすっかり熟れていた。
 純正館のホールでは、関係者の方々が忙しそうに動いてた。サイトを拝見し憧れていたわびすけさんはすぐにわかった。和服をお召になり来館者にご挨拶をされているその姿を、外で少しの間見惚れていた。他にも綺麗に髪を作り着物をお召の方がいて、文学関係のお堅い講演というイメージが、ある種の華やかと相まって、緩やかな雰囲気を作っている。
 会場の階段教室は広く明るくきれいで、天井からはモニターテレビが下がっていた。外国の方も数人見えられ、国際的な雰囲気を醸し出している。
 松岡陽子さんの講演は比較文学から見た「則天去私」というお話でした。漱石は自然(じねん)という言葉を大事にした、ということを以前何かで読んだ記憶があるが、私(わたくし)を捨て何事にも動じない自然(神)の視点から物語を描く、その代表的作家としてオースチンやゴールドスミスを尊敬していたという。何事にも動じない精神は作品を描く上でのみならず、漱石の生き方そのものだったようです。またその精神が、漱石の作品にはスーパーマンが不在で、善悪を合わせ持った普通の人間が多い、ということにもなるのでしょう。そのことが作品の登場人物と読み手を一体化させることになり、より多くの読者を惹きつけたのではないだろうか。
 松岡陽子さんのお妹さんの末利子さんも和服姿でした。本日の講演者である半藤一利さんのご夫人でもある。
 「実は洋服を着てきました。でも着物も持参しており、どっちがいいかと聞いたところ和服がいいと言われたので、ホテルへ行って着替えてまいりました。わたしもよく見えるほうがいいですからね。またわたしがここにいるのは自分の本を売るためです」などなど、シャキシャキとして裏表がなく、茶目っけたっぷりに話された。陽子さんの講演で緊張していた脳ミソがすうっと溶けたようで、和やかな笑いが会場に広がった。
 教室には講演のためのお知らせが貼られていた。プリントや冊子もあった。その中で漱石の名作に「坊ちゃん」「坊っちゃん」「坊っちやん」と三通りの表現があった。半藤一利さんの著書「漱石先生がやってきた」に、強いて統一させれば「坊っちゃん」か「坊っちやん」、とある。強いてというのは「坊っちやん」にあやかった膨大なお土産品や看板、その他の表記もまちまちで、統一となるとこれまた膨大な経費がかかるから、余り硬いことは言うまい、ということだ。坊っちやんが初めて出たのはホトトギスで、題名は「坊っちやん」だそうだが、本文の中はなぜか「坊つちやん」となっているとか。著書では、これは漱石云々ではなく、明治という時代の、表記の揺れではないか、と。
 半藤さんは、漱石は身近にいる人間の姿年齢を変えて作品のモデルに使っている、という。また、漱石が生きた背景と漱石の文学者として依って立つ位置も話された。作家が、官から物を(漱石の場合は博士号)貰うと思想の自由を妨げられるため拒否した、ということだ。作品とはときに世の中の不条理や悪に立ち向かうことがある。その為の心眼を保つためには、平等な人間と人間の関係を維持し、なん人にも媚びない精神を持つ、ということであろう。
 気がつくと予定の時間がきていた。久しぶりに余韻で身動きができないくらい、充実した時間を過ごした。会場を埋めた皆様も同じ思いだったのだろう。見知らぬ者同士ながら、互いに何かを語りかけようとする波動が、その表情にあった。
   (北海道在住)

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講演会演題




虞美人草 「京都漱石の會」会報 《第4号》 p.24 から転載

写真提供 北山雅治



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