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zoom RSS 会報記事 「火鉢」を主にして漱石を偲ぶ茶席  高田千明

<<   作成日時 : 2009/12/10 21:19   >>

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 「火鉢」を主にして漱石を偲ぶ茶席  高田千明

 「京都漱石の會」第一回例会は、桜咲く青空のもと鴨川畔の式典に始まりました。その後、都をどり観劇に参加の皆様方と別れ、茶席担当の私たちは御所の近く、築百五十年を過ぎた日本家屋へと急ぎました。そちらの広間で懇親会が催されたのです。主催者である椿先生の「せっかく京都に来ていただくのだから」との思いから、お茶席の準備も整えられ、床には漱石が西川一草亭に贈った掛け軸、一草亭好みの竹尺八花入、と漱石にちなんだ設えでした。
 お点前は遠くオレゴンから駆けつけられた方、半東は不肖私が務めさせていただきました。三つの広間を続けて毛氈を敷き、点前座には珍しい瓢型の春草蒔絵の茶箱、艶やかな塗りの美しい木製火鉢に、銀瓶が掛けられていました。瓶掛を使うべき所に何故火鉢を使われたかと不思議に思っておりましたら、漱石に「火鉢」という小品があることをお教えいただきました。
 「火鉢」は、何気ない日常を描いた二十五の短編集「永日小品」に収められています。この作品の中で冷えきった漱石の心を暖めたのは、妻の入れた一杯の蕎麦湯と揺らめく炭の焔でした。小雪ちらつく寒い一日、火鉢の中の炭火は寒々しい心象風景の中で一際鮮やかな印象をもって描かれていて、心に残ります。

――継ぎ立ての切炭のぱちぱちなる音に耳を傾けていると、赤い火気が、囲われた灰の中で仄かに揺れている。時々薄青い焔が炭の股から出る。自分はこの光の色に始めて一日の暖味を覚えた。    漱石「火鉢」より引用

 お茶をしておりますと、今はもう普段の生活では味わえなくなってしまった昔の美しいものに出会うことができます。その一つが、お湯を沸かすために使う灰と炭火の美しさ。太古の昔から、人が火の周りに集まって生きてきたように、揺らめく赤い炎には、美しさと共に、人の心を惹きつけ、一つにし、心を育てる力を持っているように思えます。
 何分にも大勢のお客様に行届かぬ接待役のため、点前座の火鉢の中の美しい灰型と暖かな炭火の色を、皆様にゆっくり御楽しみいただく時間の余裕がなかったのではないかと、ただそのことだけが残念でなりません。

   (奈良市在住)

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虞美人草 「京都漱石の會」会報 《第2号》 p.12-13 より



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2013/11/25 00:14

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