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zoom RSS 会報記事 ササユリとヤマユリ 北山雅治

<<   作成日時 : 2011/05/05 21:49   >>

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 ササユリとヤマユリ 北山雅治

 会報「虞美人草」第六号の丹治会長の研究ノート「漱石が京都で見た百合のことなど」は、散策の途中などでカメラのレンズを通して野草などを眺め、楽しんでいる私にとっては特に興味深く拝読させて頂きました。
 また、昨年末に発刊された「夏目漱石の京都」の「漱石が描いた白百合」の章でもササユリとヤマユリが紹介されています。

 ササユリは、丹治会長の著書にもあるように日本特産で万葉集にも出てくる日本を代表するユリのひとつです。ササユリの学名がLilium japonicumであることを読み、命名者と時期を知りたくなりました。生物学の学名は「分類学の父」と称されるスウェーデンのカール・フォン・リンネ(1707〜1778)によって体系づけられた二名法により、ラテン語で付けられた世界共通の名称です。
 ササユリの学名について調査したところ、ある書にLilium japonicum Thunb., 1784とあり、ツュンベリー(Carl Peter Thunberg;1743〜1828)が1784年に命名したことが判明しました。
 ツュンベリーは、リンネを師とするスウェーデンの植物学者で、ケンペル(1651〜1716)とシーボルト(1796〜1866)と共に、出島の三学者の1人に数えられ、日本植物学の基礎を作った人です。1775年(安永4年)8月にオランダ商館付医師として出島に赴任、翌1776年4月、商館長に従って江戸参府を果たし徳川家治に謁見、1776年、在日1年で出島を去り帰国しました。在日中に採集した植物800余種の標本は今もウプサラ大学に保存されているそうです。帰国した彼は、「日本植物誌」「日本動物誌」を書き、日本の動植物をヨーロッパに紹介しています。
 ツュンベリーは、ユリは、ササユリ、ウバユリ、オニユリ、テッポウユリ、スカシユリを標本として持ち帰っています。そのなかで、ササユリをLilium japonicumと命名したのは、ササユリが日本のユリを代表するものと認めた証左でしょうか。
 ちなみに、ヤマユリも日本特産のユリで、1873年、ウィーン万博で日本の他のユリと共に紹介され、ヨーロッパで注目を浴びました。それ以来、ユリの球根は大正時代まで主要な輸出品のひとつとなり、西洋では栽培品種の母株として重用されました。学名は英国の植物学者ジョン・リンドレイ(John Lindley;1799〜1865)がLilium auratumと命名しています。
 分布は、ササユリは本州中部地方以西〜四国・九州に分布し、ヤマユリは北海道や関東地方や、北陸地方を除く近畿地方以北に分布しています。ヤマユリの分布範囲から推測すると、約1年間しか滞在しなかったツュンベリーはヤマユリを採集できなかったものと考察できます。出会う機会のある江戸参府の時はヤマユリの花期ではありませんでした。

 夏目漱石は、文部省から命じられ英国留学しました。1900年(明治33年)9月に横浜を出港し、1903年(明治36年)1月に帰国しています。親友の正岡子規は留学中の1902年(明治35年)9月に病死しました。
 日本のユリがヨーロッパで注目を浴び始めた時期よりも少し遅れて留学した漱石は、途中1900年10月27日にパリに立ち寄った際、日記に「博覧会を覧る。日本の陶器、西陣織、尤も異彩を放つ。」と書いています。その後、英国では、公園を散歩し「桃の花の蕾むを見る」とか「公園にチューリップが咲くのは奇麗だ」とか、「薔薇二輪6pence、百合三輪9penceを買う」などと日記に書いていますが、日本のユリに出会ったとはありませんでした。

 関東に住む私は、ヤマユリには良く出会いますが、野に咲くササユリには未だ出会えていません。いずれ、ササユリに出会えることを楽しみにしています。

                                (横浜市在住)

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横浜市寺家ふるさと村の野生の「ヤマユリ」




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虞美人草 「京都漱石の會」会報 《第7号》 p.15-16 より



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